初めてイザークと出逢ったのはラクスに半ば強引に誘われたパーティでのことだった。
「ラクス、本当に宜しいんですか?」
「もちろんですわ、。ですが、敬語は止め下さいと、言いましたわ。
は私と違って社交的なものですもの」
ラクスは私が敬語を使う度にそう注意してくる。
私もその度にそれにいつもと同じ言葉で制す。
私は中立国に外交代表で貴女は議長の娘、そしてプラントのアイドルです。
私のような者が貴女と必要以上に仲良くする事は貴女にとっても、良い事ではありません。
が、そうは言ってもラクスは納得する様子もなく、うーんと首を傾げ、唸る。
一歩も引く気のない様子の彼女に私は仕方なく、プライベートだけですよ。と、答えた。
ラクスはまだ納得していないのか、仕方ありませんわね。と返した。
仕事でも私用でも、私に休息の時はないのかもしれない。
だが、プラントでの風習に興味があったので少し嬉しかったのも否定できなかった。
久しぶりにドレスに袖を通す。
私がオーブの代表官となって以来、いや・・・家を飛び出して以来、私の必要でなくなったもの。
オーブの者が私に面白がって着せると、いうこと以外は縁のない物となっていた。
「まあ、、素敵ですわ」
「ありがと。・・・でも、本当に私が出ても平気なの?」
「もちろん、大丈夫ですわ。それには有名ですから、そんなに心配しなくても大丈夫ですわ」
それに・・父もに来て頂きたいようでしたですし。と、言葉を続ける。
有名・・・それは良い意味での有名なのか・・・・。
私には分からない。
私をコーディネイターだと勘違いする輩も多いが、私はコーディネイターではない。
いや、ナチュラルでもない。
所詮、神の紛い物。・・・神に成り損ねた人の形をした未知の生物。
それが私を説明するのに一番良い、言い回しだと思った。
パーティの最中、私はラクスの挨拶回りが終わると常に隣にいた。
どうやらラクスは私を側に置いておきたいらしい。
何故かは分からなかったが。
私はあまり注目を集めたくなかったので少しそれに悪態を付いた。
しばらくすると、ラクスの婚約者アスラン・ザラが現れた。
隣にいる私を見ると、驚いた表情を見せた。
彼とは面識はあったが、私が此処に居る事に驚いたのだろうと、さして気にしなかった。
彼に挨拶をすると私は其処を後にする。
此処では婚約者同士の時間を邪魔をする事は許されない。
例え、望んでいない縁談だったとしてもそれが此処では普通だった。
「イザーク、どうしたんだ?」
「ラクス・クラインの元に見慣れない女がいる」
「ふーん。どれどれ?・・・ヒュー、凄ぇ美人」
銀髪の少年、イザーク・ジュール。
彼が行き成り、何も反応を見せなくなったかと思うと、その視線はある一つの方を向いていた。
友人、ディアッカは珍しい事もあるなと思ったがさして気には止めず、ラクスに視線を向ける。
そこにはピンクの髪を靡かせたラクス・クラインの姿と見慣れぬ、黒髪の少女の姿。
だが、ディアッカは何処かで見た事のあるような気がした。
「あ!!イザーク、あれって・じゃないか?」
イザークはディアッカの意外な一言に目を見開いた。
何故、気付かなかったんだ。
なんで見慣れないと思ったんだ?
幾ら自分と面識がなかったとしても、彼女を知らない訳もない。
中立国オーブの外交官、単独行動を許され、今はプラントに滞在中。
何故かは知らないが・・・。
それに加え、最近、発覚したことでは芸術面でも才がある事。
それを知り、プラントが彼女のメディアを取り入れたくらいだ。
残念な事に今は殆ど、活動はしていないという。
外交で忙しいのだろうと誰も気に止めなかった。
暫くするとアスラン・ザラが現れ、彼女と親しそうに挨拶を交わし、気をつかってか、彼女はその場を離れる。
その様子にイザークは苛立ちを覚えた。
彼女に俺以外の男が関わる事に苛立ちを感じた。
その感情をその時は分からなかったが、後にそれを知る事となった。
「ディアッカ」
「あ?・・どうかしたのか?」
「少し抜ける」
そう言うとイザークはディアッカの返答を待たずして、その場を離れた。
ディアッカはイザークの行動に唖然とするが、これはもしかするともしかするかもな。と呟いた。
そう考えるとディアッカは嬉しさを感じるのであった。
は彼らと離れるとバルコニーにやってきた。
こういった社交的なものは本当に久しぶりで疲れたのかもしれない。
は自分は神に成る事を捨てたというのに自分の体に変化が見られない事に苛立っていた。
変らぬ未来はないのか。本当に私は自分の運命から逃れられる事はないのか。
「・・・」
「えっ?!」
突如、の後から声が掛かった。
自分を呼ぶ声に驚いたが、それよりも驚いたのは少し体重を掛けて回してきた男の腕。
振り向こうにも腕が邪魔で身動きが取れない。
仕方なくそのままで話をしようと思い、声に出そうとした。
だが、それは彼の頭が自分の肩に乗ったことにより、驚愕し、の時間が止まる。
薄暗いが微かに見える色彩・・・銀の髪。
まさかっ!!と、は思ったが、彼が私を覚えているはずもない。
と、その考えを自己完結させる。
自分にとっては最近の事でも彼にとっては違うのだから・・・。
「誰?」
「・・・覚えていないのか?イザーク・ジュールだ」
「!!!・・・っ」
やっとの事、震える声で言葉を紡ぐ。
だが、彼から意外な言葉が飛び込んできた。
彼が覚えている・・・。
あんな遠い昔の事を。
彼の声が少し落胆が入り混じっていて、が覚えていないとでも思ったのか、から体を離す。
基本的に彼の公の仕草は紳士そのものであり、初対面ならば彼にとって有り得ない行動だからか・・・・・・?
は嬉しさのあまり顔を見られないように俯き、声にならない涙を流す。
イザークはその様子を戸惑いの色で見ていた。
自分の所為で彼女を泣かせてしまったのかと、自嘲して・・・・・・・。
「大丈夫か・・・?」
「はい・・・・突然、すみません」
漸く落ち着いたにイザークは細心の注意を払い、彼女に近づく。
は涙を拭い、顔を上げ微笑みを見せる。
社交辞令での笑みではなく、心からの笑みを――――。
落ち込んでいたイザークはそれを見て、顔を赤く染めるのだった。
「・・・貴方が覚えていてくれたのが、嬉しくて・・・」
「っ!!・・あたりまえだ!」
の意外な言葉を聞き、思わず照れ隠しをしてしまうイザークであった。
「・・・もうそろそろ、戻りましょう?
いつまでも此処にいては誰か心配なさいます」
「・・・・ああ」
少しの間、そのまま其処で談笑を続けていた二人だったが、はコレは私用ではないことを思い出した。
彼と居る事は安らぎを覚えたが、このまま抜けていてはラクスにも悪いし、彼にとってもよくない。
だから、提案をした。
実際、イザークにとってそれはどうでもいいことであり、久しぶりに逢えたとの時間を大切にしたかった。
しかし、それを彼女に言っていい加減な奴だと、思われたくないばかりにそれに了承したのであった。
これからは時間がある。
以前とは違うのだ。
ココに彼女が居る。
<あとがき>
疲れたーーーーーーーーーーっ!!
いつも以上に時間が掛かった回です。
話の始まりを今更書くのが私です。すみません。
公式ブックをもっていない私にとって時間軸がヤバイことになりそうです。
はやく手に入れたいです。
補足説明をすると、お分かりの通り、2人は以前にあったことがあります。
その時の話は本編か、過去編で少し触れるかもしれませんが、今のところ、詳しく書く予定はありません。
リクがあればおおいに書きますが。