……、気分はどうです?」

「大丈夫よ、ギル。…この程度、何の心配も要らないわ」

「だが、そうは到底見えないな。もう、戦場には行かないでもらえるかな」

「…珍しいわね。貴方がそんなこと言うなんて」

「そんなこと当たり前だよ、君は私の大事な女(ひと)なのだからね」

「相変わらず、冗談がお上手ですこと……」





アスランと別れ、は当てられた士官室へと行こうと
通路を歩いていたところギルバートに発見された。
の腕を掴み、に当てられた部屋の隣に位置する
ギルバートの部屋には押し込まれた。
心配を露にした表情でを見下ろしている。
だが、はそれを信用しようとはしない。
にとってギルバートはまだ、信頼における人物ではないのだ。
それはギルバートもその身にひしひしと伝わってきたが嫌な顔一つしない。
がそう簡単に受け入れることは出来ないということをギルバートも
知っているので口にも出せない。
だから今は近くに置いておくことしか出来ない。
以前ではそれも叶わなかったのだから、そんなに高望みもできないのだが。
説教としか云い難いものをは軽く交わし、部屋から去っていった。
その後、ギルバートがどうしていたかも知らずに――――――。





























始まりの予感











山の端 月は満ち
息づくあなたの森
夏草浴びて眠る
愛おしい 横顔
おぼろな この星
大地に 銀の涙
繭(まゆ)たる蛹(さなぎ)たちは
七たび身をかえる
青にLaLaLu LaLaLu
染まる 恋し繭玉
揚羽(あげは)の蝶になる
やがて宇宙(そら)をつつむ 無限の翅(はね)模様
いのち輝かせよ











<あれ?さん?もう、具合いいんですか?>





の歌声が外に洩れたのか扉の向こうから聞き覚えのある女性の声がした。
瞬時にそれがルナマリアだと分かり、鍵を開けて中へ通した。
予想に反して、レイとシンも一緒であった。





「ええ、もうすっかり良いですわ。
 ありがとう、皆さんのお陰ですわ」

「え……、そんな…当たり前のことしただけですよ!」

「そ、そうですよ。さん!」





が頭を下げてお礼を述べると、シンとルナマリアが騒ぎ出した。
至って、レイは普通だった。
シンは顔を紅く染め、ルナマリアも落ち着かない様子だ。

















「さっきの歌ってさんですよね?」




ふと先程の歌が気になってルナマリアはこの話題から離れた。
シンも興味深々の様子で身を乗り出した。




「ええ、そうですわ」

「なんだか、懐かしい感じの曲ですね」

「そうですね、この歌は鎮魂歌の時に用いているものですから・・・」

「「え・・・」」




「その所為で懐かしいのかもしれませんね。」と
が続けるとシンとルナマリアが固まってしまったのが分かった。
どしたのか分からず、首を傾げているとレイがフォローに回った。
『戦艦内では縁起の悪いのではないか?』と。
それを耳にし、はハッとした。
は何か嫌な予感がしてそれがこれに順するものだったのだ。
それはミネルバのこと表しているのではないとには言える。
これをその何かに送るために歌っていたのだが事情を知らない者に対しては失礼極まりない。
は素直に自分を恥じて謝罪を申し入れた。
すると、また二人は騒ぎ出したのだった。




































ルナマリア達にレクルームへと誘われ、
通路を歩いていると隣に居るレイに声を掛けられた。
前方にいる二人に気付かれないようにか小声で。




「何があったんだ?」

「・・・分かる?」

「ああ」

「何だか嫌な感じがするのよ」

「?」

「人の業が近くに存在する気がするの」

「それで歌を?」

「ええ、その人達に送ったつもりよ」




が感受性が強い事は先の戦闘でレイにもよく分かった。
とはいっても彼女の力が未知数なのは変わらない。
が意味のないことをするのはレイは
殆ど見た事がないため気になったのだ。
すると、案の定は何かを察知したらしい。
それをどうにかレイに伝えようと言葉を紡ぐが、
その度にの顔色が悪くなっていく。
レイはそんなを見ていたくなかったのか、
無理しないで良いと、に伝えた。
それが何かは直ぐに分かる。
の状態から見てそれだけは分かった。




















だが、それが予想以上のものであったことは誰も予想が付かなかった。















































<あとがき>
今回、長くなりそうだったので此処で一度きります。
流石にこの後の落下まで書こうとすると読者側も大変でしょうから。
ここは前フリなんでサラッと読んじゃってください。
こんな長い前フリもあったもんじゃないでしょうが・・・・。

次にはイザークが登場するかもですね。
とりあえず、早く第1クール終わらせるように頑張ります!
前作も完結するように頑張ります!
質問でも感想でもあれば嬉しいです。





(05/07/26)