「OSは基本設定になっています」
「承知していますわ」
「あ、あのっ……本当に宜しいのですか?」
整備の完了したMS、ブレイズザクファントムには乗り込む。
其処に待ち構えていた整備士の一人が担当を受け持ったのか、
基本動作の確認などの説明してくる。
説明が完了すると、兵は心配そうな面持ちでに声を掛けてくる。
兵の心配は最もな事で、が非常識なことをしているのでしかたがない。
兵を落ち着かせるようには笑みを浮かべた。
「ええ、大丈夫です。
今はこの危機を乗り越える事が先決ですから、心配は無用ですわ」
「それは失礼しました!…御武運をお祈りします」
「ありがとう」
「それではお気をつけて」
最後にそう言葉を掛けると、MSのハッチが閉まった。
はOSを起動させ、最終確認を済ませる。
本当は此処で組み立て直しても良いのだが、がいなくなった後、
OSをまた新たに入れ替えなくてはならない。
その時、問題が幾つか生じるため、はそれをしない。
しなくても、がOSに合わせれば良いからだ。
それを可能にするのはの遺伝子と自分自身がカスタマイズしたOSのお陰だった。
「それでは発進致します。誘導ありがとうございました」
二年の時空を経て、伝説の女神が戦場に舞い戻った。
狭い空間に中で
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「どうかした?」
<大丈夫なのか?>
「ええ、私は大丈夫よ」
<なら、いいが……無理はするな>
「それは、もちろん。では、通信切ります」
<……ああ。、気をつけて…>
<ありがとう…、レイ>
プツッと音を鳴らして、通信の切れる音がした。
レイが心配してくれるのは分かってはいるが、はまた知人を失う事を恐れていた。
自分より寿命の短い彼らに”私より先に死ぬな”なんて無理な事は言えない。
だから、は守るのだ。――――自分の力で。
レイに申し訳なく、思いながらもは操縦器具に力を入れた。
直ぐ近くにはレイの白いザクファントムがいる。
そして、今では珍しい小型のMAが此方に向かって接近していた。
赤紫色に配色され、何処か懐かしい。
そう、それはまるで”エンディミオンの鷹”を思わせるものがある。
機体の動きからも彼の癖が感じられ、は言葉では言い表せない感覚に陥った。
(まさか……本人だって事はないわよね…?
でも、この波動は確かに彼そのもの。どういうことかしら?)
<!気を抜くな!!死にたいのか?!>
「ごめんなさい。でも、大丈夫。……心配してくれてありがと」
<あ、ああ…。>
不意にレイの怒声がスピーカーを通して聞こえてくる。
相手の正体にばかり、気に取られていた所為で少し油断していたのかもしれない。
今まさにガンバレルがオールレンジ攻撃を繰り出そうと此方に向かってきていた。
はレバーに力を入れ、今までの無防備な動きとは全く異なった機敏に動いた。
避けるだけでなく、ガンバレルを討ち落とそうとライフルを両手に構える。
いつの間にか接近していた機体を後方へ移動させ、再度レイへと通信回線を開き、
お礼を述べると、辛うじて聞こえるほどの音量で”当たり前だ”と言う言葉が聞こえた。
それを聞いてまだ、戦闘中だというのには笑みを浮かべた。
それはまだ、自分に居場所があることに対しての喜びからだった。
ミネルバの方から大きな爆発が起きたようだ。
は驚いて、そちらに視線を向けるとミネルバは小惑星の残骸から脱出を謀っていた。
はそんな無茶な行動を起こせる者がクルーにいたのか?と疑問に思った。
<!!>
「わかってるわ。ミネルバは一応、もう大丈夫のようだからMAを!」
<ああ、援護は頼む>
「もちろん、そのくらいはさせてもらうわ」
レイの声にはっと我に返った。
今いる場所は戦場、状況分析などしている場合ではない。
レイと共にMAをどうにかする事が問題だった。
ミネルバの主砲であるタンホイザーを起動させ、ボギーワンに向け発射された。
そしてそれは深手を負わせ、帰還信号ととも去っていった。
ミネルバも同様に深手を負い、戦闘を継続できる状態ではないため、
この場は見逃す他なかった。
<、帰還するぞ。??……大丈夫か?>
「大丈夫。…少し、疲れただけだから」
<それならいいが…>
は宇宙の広さに少し精神を当てられていた。
本来、実戦に出られない体なのだ。
この時、軍人以外の者が死ぬことはなかったため、その影響は少なかったが、
此処が地球等の民間人がいれば、は危なかった。
は感受性が高いため、人の精神に当てられやすいのだった。
「、本当に大丈夫なのか?」
「ええ、少し休めば大丈夫」
「それならいいが、悪化したなら早めに言ってくれ」
「ありがとう」
MSから出てヘルメットを取り外す。
嫌な汗も一緒に流れているためか、はあまり顔色が良くない。
MSデッキを流されるまま浮遊していたをレイが捕まえ、体勢を整えさせた。
はそれにお礼を言い、レイに顔を向けた。
の表情を見て、レイは眉を歪ませた。
それはレイが考えていた以上にの顔色が悪いためだ。
「ちょっとっ、レイ。何、雰囲気作ってんのよ!
さん、お疲れ様です!」
「ええ、お疲れ様」
「って、さん大丈夫ですか?すっごく顔色、悪いですよ」
レイを小突きながら、ルナマリアはの方に視線を向けると驚愕した。
こんな冗談している場合ではない。
ルナマリアまで顔を青くしながらに声を掛けた。
「大丈夫ですわ。少し、休めば元に戻りますから」
「本当ですか?」
「どうしたんだよ?そんなところに集まって…、
さん!!大丈夫ですか?!」
「シンもありがとう。でも、大丈夫ですわ」
「大丈夫って事…、ないですよ」
いつの間にか集まったシンやルナマリアにも心配され、は医務室へと連れて行かれるのだった。
はそんなに心配されるほど、具合が悪いつもりはないので少し疑問に思っていた。
「アスラン・ザラ!あいつが!?」
当直を終え、シン達のもとへきたメイリンは早速、ブリッジであった事を話していた。
を医務室に押し込め、レイを監視にやってきた後の事だ。
メイリンはレイももいないことを不思議に思ったが、
ルナマリアの耳打ちにより何か分かったというような表情になり、
その話は直ぐ終わりを告げた。
今はメイリンの話に二人とも興味津々だった。
「、もういいのか?」
「ええ、こんな所に押し込めなくても大丈夫だったのにな…。
でも、友達思いの良い子達ね」
は数分後本当に顔色が本来のものへと戻った。
レイはそれに安堵し、が起き上がるのを手伝う。
が苦笑しながら言う言葉にレイは頷きもせず、
微笑してに肯定して見せた。
「……アスラン?」
「え・・・、君は?」
「久しぶりですね、アスラン」
「まさか、本当に君なのか?!」
「貴方の知っているかは分かりませんけど、
私が貴方の知っているだと感じれば、私は””ですわ」
まだ心配するレイを何とか、振り切ったと思ったらブリーティングルームで彼を見つけた。
パトリックの息子を。
久しいと感じ、は声を掛けた。
は今回、姿を眩ますためにこの姿になったわけではないのだから。
いや、今回も。と言った方が正しいかもしれない。
「今まで何処に居たんだ。イザークが心配してたんだぞ」
「知っての通りよ」
それに彼の事も知っている。
分かっているつもりだという事も付け加えて。
「なら、何故?」
「決めかねているから」
「え?」
「君にはまだ、早いかもしれないね」
「え?」
「まあ、また悩んだ末に決めるといいよ。
貴方が何か私に言ってほしいなら、言うわ。そのうちね」
アスランはの言っている意味が全く分かっていなかった。
いや、本当に分からなかったんだ。
まだ、殆ど者が気付いていないのだから。
<あとがき>
やっと続きがかけました。
お待ちになった方すみません。
簡単に書いたため少し、戦闘場面は省いています。
ヒロイン視点という事でご理解ください。
次回か次の次にイザーク登場。
イザークの登場激減につき、めいいっぱいだすのでそのつもりで。