「ルナマリアさん、いつまでもこうしているのもなんですから、

 一先ずは代表の傷の手当てをなさいませんか?」





きょとんと、銃を二人に向けたまま動かなくなったルナマリアにが声を掛ける。
ルナマリアはそれに、そうですね。と答えて、アスラン・カガリの両名を医務室まで案内することにした。








「避難するのか?この艦・・・。プラントの損傷は、そんなに酷いのか?」





ルナマリアに先導されて、進みながら、カガリが心配そうに尋ねた。
ルナマリアは肩越しにちらりとカガリの方を見やったが、答えは無い。
アスランとカガリは武装した兵士達に前後を守られ、艦内通路を歩いていた。
守るとはいっても、監視されていると言った方が正しいのだろう、とアスランは思う。
理解はするが、あまり居心地の良いものではない。
それより、気になるのは紅いワンピースに帽子、ピンクの髪を緩く編んで片方の肩に垂らし、
紫の瞳の色をした一見アスランよりも2,3年下の少女。
何処かで知っているような気がしていた。
その容貌は美しく、何処か可愛らしさもある古典的な令嬢のようだが、
ラクスにも何処と無く似た雰囲気もある。
しかも銃をこちらに向けた赤服の少女に呼ばれた彼女の名前は””。
それは、昔の同僚が半年以上前から探し続けている恋人の名前と同じだった。











<コンディション・レッド発令!コンディション・レッド発令!

 パイロットは直ちにブリーティングへ集合して下さい>





警報が流れ、アスランは漸く事態を理解して、愕然とする。
この艦が発進するのは、避難の為ではない。
コンディション・レッド、その警戒レベルが意味するのは――――





「戦闘に出るのか!?この艦は!」





アスランがきつく問いただすと、ルナマリアが戸惑った顔をこちらに向けた。
彼女も事情を理解していないのだ。
カガリが焦った表情でアスランを見つめる。





「アスランっ・・・・・・」





その名にルナマリアとが反応した。





「―――アスラン?」





とたんに真っ正直なカガリが、「あっ」と、口を押さえる。
非常事態の連続に、偽名を使う事を忘れてしまったのだ。
アスランはルナマリアの凝視を感じ、その目を見返す。
ルナマリアの視線には先程とは違う熱意が篭っていた。
それは、好奇の目だった。
一方、は二人から視線を外し、呆れ返っていた。



(二人とも正直者だから、仕方ないのかしら・・・・)













帰還、そして・・・










『艦長』

「どうしたの?」

『戦闘中との事もあり、ご報告が遅れました。本艦発進時に
 格納庫にて、ザクに搭乗した2名の民間人を発見―――』

「え?」





厄介な事になった。
この艦はこれから戦闘に向かうというのに―――と、考えるタリアの耳に、信じがたい言葉が届いた。





『―――これを拘束したところ、2名はオーブ首長連合国代表、カガリ・ユラ・アスハとその随員と名乗り、

 傷の手当てとデュランダル議長への面会を希望いたしました・・・・・・』

「オーブの?」





タリアは愕然として聞き返した。
既にエレベータへ向かおうとしていたギルバートが引き返してくる。
その顔にも驚愕な表情があった。





「彼女が?何故この艦に・・・?」

『僭越ながら独断で傷の手当てをし、今は士官室でお休み頂いておりますが・・・・・・』






嫌な予感が当たった。タリアは次から次へと出てくる問題に頭を抱えたくなった。
そういえば、もう一人勝手に動いている者の事を思い出した。





「それでは一緒なの?」

『え・・あ、はい。彼女は私とずっと一緒です。

 今、横にいらっしゃいますが、変わりましょうか?』

「いいわ、一緒ならいいのよ」






代表達のいる士官室にはすぐ行くと告げ、通信を終了した。
その瞬間、珍しくレイが口を挟んだ。





「あの・・・、は艦内にいるのですか?」

「ええ、そうよ。レイはのところに行ってもらえる?」

「はい」





タリアの言葉はレイにとって願ってもない事だった。




























「あっ!レイ!お疲れ様。大丈夫だった?」

「・・ああ」

「そう、よかった!」





アスラン・カガリ達とは別の士官室ではレイの来るのを待っていた。
レイは優秀であったが、初陣という事もあって、少しも心配していたのだ。
の言葉を簡単に返すレイだがその顔にも笑みが現れていた。
暫く、には会えないと、思っていたからそれは当然だった。
嬉しいと思う反面、どうしてシェルターに向かわず、
自分から危険に飛び込むような事をしたんだ!!と、声を張り上げて問い質したかった。
そう思って此処まで来た筈なのに、実際にの顔を見る事が出来ると、それも消え失せてしまった。
だが、聞く、と言う事は止められなかった。





・・・、どうしてこんな無茶をしたんだ?」

「無茶ではないわ。私には力がある。見届ける義務はあるわ」

「え・・・、・・それはいったい・・・・・?」





レイには時々、の言う事が分からない。
何故かそれが自分の責務だ、というかのように、突然、言い出す。
そしてレイがそれの答えを求めるといつも邪魔が入り、結局、聞き出す事ができないのだ。
今回もそうだ。通信が入ったのだ。





『レイ』

「はい、どうかしましたか?」

『代表に艦内を案内して差し上げる事になったのよ』

「!!・・・・それで?」

『レイが案内役になったのよ』

「はい、分かりました。・・・ですが、は・・?」

『”一緒に”だそうよ』






非常識な事態にレイも少し驚いた。
通信を終え、そしてに席を立つように言う。





「え?・・どうして?」

「代表を案内するそうだ、も一緒に」

「えっ・・・!?」





































<あとがき>
長くなったので此処で一度切ります。
それにしても、なかなか進みませんねえ。
困りました。
次回、シンは出てくるだろうけど、ヒロインと接触はするのか?
まだ、わかりませんねえ。
アンケが凄い事になってますから、少しでも出番、増やさないと!
あれ?もしや、1度もでてない?
戦闘シーンはヒロインに関係ないからふっ飛ばしてるからなあ。
書いたほうがいいですか?(ご意見お待ちしてます!)
基本的にヒロインサイドで書いているので、どうしようかな?と、いつも迷っているのですが・・・。
それでは次までお待ちください。

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