「貴方を探していた。私と共に来てはくれませんか?」





一応、疑問詞を使ってはいるが、それは強制とも言える彼の言動に私は驚いた。


私を知っている者の殆どがこの世にいない中、彼は何故、私を知っているのだろうか?


後にそう思ったが、その時の私の思考回路は無に等しかった。





















act01.契約













私が何も答えないのを良い事に彼は私を待たせていた車に乗せてしまった。


その時、彼の表情は笑みを深く刻んだような気がした。










車に連れられ、着いた所は以前、私が訪れたことのあるクライン邸・ジュール邸と並んでも引けをとらないような大豪邸だった。


私が不審そうに視線を隣にいる彼に移したが、彼は笑みを深く刻むだけだった。










”別宅ですから、何も心配は要りませんよ”そう言って彼は私に手を差し伸べた。


彼は私を放す気がないらしく、仕方なく私は彼の手を取った。


今、思えば、これが悪かったのかもしれない。











































客間に通され、使用人にお茶を用意させると、彼は全てが分かりきっているかように、人払いをさせる。


暫くの沈黙の中、久しぶりに人と接触した所為か、少し思考回路が戻ってきた気がする。


だからか、私は彼に対して不信が出てきた。





「・・・・・・・私、貴方の名前を聞いていないのだけど?」


「それは失礼しました。ギルバート・デュランダルと申します。

 以後、お見知りおきを。・・・・いや、クイーン”アマテラス”」






・・・・・・・・・・・・!?い、今・・・彼は何を!?


私の名前を知っていても指して不思議ではないが、今の私の姿を見て、ソレが分かるのはおかしい。


あの頃は黒髪に青の瞳の色をしていたし、外見だって14〜16くらいの容姿をしていた。


今の私は20代といったところで、10代には18.19にはあまりみえないだろう。


そして極め付けが今の私の外見が蒼銀の髪に紅い瞳なのである。


名前を変えていないからといって分かるはずもない。


そして、彼はなんと言った?・・・・・・・・・私の事を”クイーン”と”アマテラス”と呼ばなかったか?


それは私のココにくる以前の名前であり、プラントにも地球にも関係のないモノだった。


それが何故、彼が知っているのか分かるはずもなかった。










ソレは冷静になって考えてみれば、直ぐに分かる事だった。


彼の名はギルバート・デュランダル。


ユニウス条約(停戦条約)締結後に解散した臨時評議会の後を受けて最高評議会議長に就任。


亡きシーゲル・クラインの思想を踏襲しナチュラルとの融和の道を図っている。


彼がクライン派だったのは議長に就任してから知った事だが、本当にナチュラルとの融和を望んでいるのかは不明。


私はこれは疑わしい事だと思う。


ナチュラルもプラント・・コーディネイターのどちらも前大戦で溝を深くしてしまった。


もうあんな思いをしたくはない、そんな思いで結ばれた条約。


それはどちらも同じ気持ちだろう。


だが、これから前大戦やそれ以前の事を怨んで、テロ行為などをどちらか一方でも起こした場合、どうなる?


例えば、ナチュラルの一部の者が事を起こしたら、プラントの者は一部の”人間”がした事だ、とは思えるのだろうか?


その答えは”NO”だろう。彼らの怒りは地球全体に向けられる。


そうなれば、その先どうなるかは誰だってわかっている。


彼ら両方の考え方や価値観などが変わらなければ、彼らの共存はありえない。


彼らはそれは分かっているのだろうか?自分たちが目先の感情に流されてしまうことに。


私は信じたい。彼らを。だから、私は”チカラ”を捨て、此処で生きているのだから。
















































「どうかされましたか、クイーン?」


「いえ、何でもありません。それで貴方の目的は?」





少し物思いに耽り過ぎたのか、デュランダルは心配そうにこちらを見ていた。


私がお茶に口付けながら、話を進めようとする。


彼は目を丸くして、”おや、言っておりませんでしたか?貴女の事を探していた、と”と、抜け抜けと言い放った。


良い性格をしている。この状況で冗談をかますなんて・・・・。


思わぬ言葉を口にした議長に大きく息を吐いた。





「・・・本気ですか?」


「ええ、もちろん」


「・・・私を帰す気は?」


「貴女なら分かっているでしょう?」


「・・・・・・・・・」





はいはい、分かりました。貴方に出会ったのが私の運のつきというやつですかね?


それなら私もそうしましょ。感傷に浸っている暇が本当は無い事は気づいていたのですしね。


それでも少しでも私は立ち止まる時間が出来たのだし、良しとしましょう。


私は心を入れ替え、目の前の彼に対峙する。






「・・・・それでは私はどうすれば良いのでしょうか、議長殿?」


「私の側に居てください。クイーン””」





・・・・・・・・・・この男はなにボケかましているのでしょうか?


本気ですか?本当に。









































「議長、本当にそれをお望みですか?」


「ええ、もちろん」


「それでは、私は貴方の元に居ましょう。ですが、条件があります」


「条件・・・ですか?」


「ええ。貴方の姓を頂きましょう。私は貴方の義妹として側にいますわ」





デュランダルは私が側にいると言ったら、とても嬉しそうにしたので私は条件をつけましょう。


私はずっとこの世界の者としての証が欲しかったから、それは私にとって物凄く都合の良いものだった。


それも最上級の肩書き付きで。


私が言い放った言葉に唖然としている彼の表情は見物だった。


大丈夫ですよ。私、タダでなんてセコイことしませんから。ちゃんと協力してあげますよ。


私に残された力で。彼らにとってとても貴重なものですからね?


全てはアナタのために。全てを奉げます。


アナタにはとても不本意なものでしょうけど、私もアナタも不器用ですから。









































「・・・・分かりました。それでは私の事は名前でお呼びください。」


「はい、わかりましたわ。・・・ギル、では私の事はクイーンなどとは呼ばないで下さいね?」


「ええ、もちろん。では、契約成立ですね」


















そこから私の新たなる戦いは始まった。












































<あとがき>
今回は長めに書けて満足です。
今回は少しヒロインを黒くしてみました。
議長になんて負けていられません。
この連載、種の時よりかきやすいですね。
前回は彼女は裏で色々回させていたので、これは表で。
議長にヒロインの事をクイーンと呼ばせたのはカガリが姫と呼ばれた時から決めていました。

次回はアニメ1話目か、その前日くらいをやろうかと思います。
何方かこの連載読んで頂けていますか?


それでは感想などはコチラにお願いします。