君の影 星の夜に
朝に溶けて消えてゆく
行き先を無くしたまま思いは溢れてくる
強さにも 弱さにも
この心は向き合えた
君とならどんな明日が来ても怖くないのに
二人歩いた時を信じていてほしい
真実も 嘘も無く
夜は明けて朝が来る
星空が朝に溶けても
君の輝きは分かるよ
思い出を はばたかせ
君を空へ舞い上がる
星空が朝に溶けても
君の輝きは分かるよ
愛してる ただそれだけで
二人はいつかまた会える
星の在り処
の歌を聞いてからというものレイは休暇の度にデュランダル邸に訪れた。
レイがピアノを嗜むことがしれてからは伴奏を務めるようにも及んだ。
ギルバートがいない時は使用人がいない訳ではないのだが、この広い屋敷に一人なのである。
何とかして少しでもの心を和らげようとレイは足を運んでいた。
がそれが物凄く頻繁なものだったので、「そんなに気を使わないでいい」と言ったのだが、
レイは好きでしていることなのでそれが途切れる事はなかった。
そして今日もそれは変わらなかった。
「はバラードばかりだな」
「レイは嫌い?」
「いや、だが…ギルにもらったものにはバラード以外もあったぞ」
「……こんなおばさんがそんなハイテンポな曲歌ったって気持ち悪いだけよ」
レイはにもっと明るさを取り戻してもらおうと、提案をしてみた。
はそれを聞くと不機嫌になり、プンっとそっぽを向いた。
レイは自分が何か気に触るような事を言ったのかと思って、
思考を巡らせたがやはり原因はわからなかった。
「は若いと思うのだが…」
「レイ…、私のこと何歳だと思っているの?」
「…15、6」
「ハズレ」
「何歳なんだ?」
「うーん、秘密」
何故か歳の話に移り変わってしまっていた。
レイの発言には意外という表情を露にし、その先を急かした。
外見年齢を言ってはみたがやはりそれは正解ではなくて、
外見や言葉遣いなど接してみて分かっている点で探してみても全く検討がつかない。
何せ、彼女の一族は長寿なのだから。
それだけでもなく彼女の生きてきた処と時間が食い違うのか、
予想するのは難しいようだ。
降参というように、素直に聞いてはみるものの欲しい回答が返って来るはずもなく、
レイはの業とらしい仕草に溜め息をつくのだった。
「今度はレイも一緒に歌いましょう?」
「いえ、それは・・・」
帰宅しようと出入り口までやってくると突然のの申し出に驚愕した。
返答に困っていると、から笑い声が零れた。
「ふふっ、冗談よ。じゃあ、”ピアノ”」
「え?」
「お願いできるかしら?」
「それはもちろん。ですが・・・」
レイはの言葉に戸惑ってしまう。
自分は構わないが、本当にそれで良いのかと。
はそんなレイの気持ちを感じ取ってか、少し悲しそうな表情を示した。
「気にしないで……、私が我侭言っているだけだから」
「…はい、分かりました」
「じゃあ、お願いね」
「はい、それでは失礼します」
「ええ、気を付けて。
また、尋ねてくれるのを楽しみにしているわ」
律儀なレイに微笑ましさを感じながら、レイに返した。
いつまでこうしていられるのかと物思いに耽りながら―――――――。